葉巻の一貫性

consitencyあなたの葉巻の嗜好はひとまず横において、葉巻を品質で考える時、あなたはなにを基準にして葉巻を区別するだろうか?そんなに深く思い悩まなくても、タバコそして作りという2つの要素が葉巻の質を決めるための基準だと思い当たる。そう、葉巻はこの2つの要素からもたらされる一貫性によってその質を判断される。まずは良いタバコの葉、そして葉から葉巻に形成する技術。両方の要素が等分に作用して、初めて質の良い葉巻が生まれる。
確実な技術のうえで葉巻を形成することは、必要な設備と熟練した葉巻職人を持ち、かつ常に職人を育てる意識を忘れないでいるメーカーにとって難しいことではない。葉巻を形成する工程はほぼ完全にコントロールできるからである。条件を備えた環境のなかで形成された葉巻は間違いなくなめらかに燃える。
もうひとつの大事な要素、良いタバコ葉の生産は少し難しくなる。タバコの質は多くの要因から影響を受けるからである。シードの持つ天性の質、土の持つ質と畑の条件、一定ではない気候の変化はもちろん、温度、湿度の支配下にある発酵の過程も少なからず影響する。その上、すべての要因が最上の状態で機能し、それを利用できる能力と設備を兼ね備えているタバコ農民であっても、劣等種のタバコの収穫に直面しなければならない年もありうるのである。その結果、良い又は悪い作物年という表現がうまれてくる。
常に自然と向き合わねばならない葉巻メーカーは、質の良いタバコの生産はもちろんのこと、その質の一貫性を保つために多大な努力をする。今年は葉巻が不作で商品として市場に送り出せないでは、葉巻メーカーとして存在できない。作物年の善し悪しがコントロールできにくい要因によって左右されるのなら、悪い年の供給不足を防ぐために、質の良い葉の十分なストックを持つことによって葉巻の質をコントロールする。幸いにして、実際的な知識を持つ葉巻メーカーはこの問題を首尾よくこなしている。

同じ製造日、同じコードをもつある葉巻ブランドの視覚的な違い。ラッパーの色が表す通り、フレーバー・プロファイルもあきらかに違う。フレーバー・プロファイルは違うが、双方とも美味しかった。

同じ製造日、同じコードをもつある葉巻ブランドの視覚的な違い。ラッパーの色が表す通り、フレーバー・プロファイルもあきらかに違う。フレーバー・プロファイルは違うが、双方とも美味しかった。

葉巻メーカーは、2つの要素を兼ね備えた一貫して上質な葉巻の生産のため、人為的にコントロールできることはすべて行うだろう。そして次にメーカーが夢見てやまないこと、それがブレンドの一貫性である。すなわち自社ブランドの独自なフレーバー・プロファイルの確立である。
同じ箱に詰められた葉巻に類似したフレーバー・プロファイルを持たせることは可能性が高い。しかし、その葉巻ブランドを持つすべての葉巻に一貫したフレーバー・プロファイルを持たせることは非常に困難なことである。実際、ある葉巻ブランドのフレーバー・プロファイルは劇的に変わり、他の葉巻ブランドは緩慢に変化している。独断で言わせてもらえば、葉巻に正確に一貫したフレーバー・プロファイルを持たせることは、ほとんど不可能な世界だ。
そうなってくると、葉巻専門家といわれる人が葉巻ブランドの味と風味について述べることを気にするのは全く意味のないことである。彼が吸った葉巻とあなたが吸うつもりの葉巻が正確に同じフレーバー・プロファイル持っている可能性はほとんどない。したがって、「後半のウッディな味からナッツ味の風味まで変化する葉巻」のようなコメントは大きく割り引いて受け取るべきだ。初心者ではない葉巻愛好家であるあなたが同じ味覚経験を得られなかった場合、その葉巻が悪かった訳でもましてやあなた自身の所為でもなく、単にまったく同じではないフレーバー・プロファイルを持つ葉巻だったと理解するべきだ。どのフレーバー・プロファイルが正しいか、或はより良いかという疑問は、また別の、無限に議論のある問題である。
1つの葉巻ブランドのフレーバー・プロファイルには想像するより幅があることを一旦了解してしまえば、葉巻ブランドがいつもその味を一貫しているという信念は神話となる。その神話は、理解できる明白な理由のために、メーカー自身、そして葉巻について書くことで生業をたてる、いわゆる「葉巻ソムリエ」によって創りだされた自身の願望を底辺にした思い込みに近いかもしれない。昨今の限定品ラッシュには、葉巻メーカーの神話からの逃避が感じられる。一貫したフレーバー・プロファイルの幅を狭めすぎて、身動きがとれなくなった結果、違うブランド商品として限定で市場にだしてしまう。こんなに楽なことはない。限定なのだから来年のことを考える必要はないし、品質保持のためのタバコのストックも必要ない。もちろん、マーケティングの戦略として選ばねばならなかった方法に違いないが、過度に走ると、長い時間をかけて得たブランドとしての価値を失いかねない。

一貫性が葉巻の品質の決定に重要であることは間違いない。しかしながら、フレーバー・プロファイルの幅が葉巻の欠点かといえば、それは大きな間違いである。現実に私にとって、葉巻の最も魅惑的な要素のひとつは、同じ葉巻ブランドであろうと、どの1本の葉巻も同じでないことにある。1本ずつ一貫していない微妙に違うフレーバー・プロファイルに出会い、違う経験を持つことができる。1本ずつに光や風や大地、そして人の手を感じる。これが他の煙草とは違うプレミアムシガーの醍醐味である。時には、箱に記されている製品番号や製造日を読み、その葉巻ブランドが持つ幅のあるフレーバー・プロファイルを楽しむのは、考えてみればかなり高度で贅沢な遊びではないだろうか?

Posted: October 31st, 2004   |   Category: 葉巻の知識