幻の葉巻。パンドール。

キューバンダンヒル、キューバンダビドフ、そしてプレカストロの銘柄などを思い描けば瞭然、簡単に手が届かないものは不思議と存在感を増し、幻のシガーは多くのスモーカーたちの憧憬の的となる。生産が中止となったレギュラーラインの葉巻は、そんなシガーのなかでも特別な存在である。ついこの間までまったく幻の気配はなく、しばらく見えなくなってもそうは気にせず、ある日突然、猛烈に欲しくなる。数年まえからわたしにとってのそういう幻の葉巻が「パンドール」である。

昭和36年 (1961) 発売のパンドール葉巻 (Paon d’dor = フランス語で”金色の孔雀”の意。なぜか商品のキャッチフレーズ”Cigare de Lux”もフランス語である) は日本国内で生産された数少ないハンドメイド葉巻ブランドの一つである。初めてその葉巻がわたしの目にとまったのは1982年頃だったと思う。キューバンシガーを幾分か扱う近所のタバコ屋で、「ところで、日本製の葉巻は存在しますか?」というわたしのナイーブな質問に、「はい、これです。」と店主は不思議な木箱を出してきた。スペイン杉でなく、別な木製おそらく桐で作られた箱は綺麗なレトロデザインで目立っていた。箱に入っていた葉巻は、ごく普通のハンドメード、プレミアム葉巻のように見え、とにかく5本買った。

計りはしなかったが、普通のコロナサイズのシガーだと思う。後にウェブを検索すると、公の製造たばこ小売定価表のなかではパンドールのサイズは「長さ 128ミリメートル」、「中央部の外周 55ミリメートル」と記録されており、予想通りコロナサイズであった。多少の珍しさを感じながら写真も撮ったが、なぜかテイスティングコメントは手元にない。記憶では美味しい葉巻であり、時折買いに行って、ポケットマネーに優しいシガーとしてわたしのローテーションの仲間入した。1987年頃から近所のタバコ屋では25本入りのパンドールを見なくなり別段気にせずわたしのマインドからも消えた。

パンドールを再び思い出したのは1999年頃だった気がする。CigarJapan.comのWeb siteを立ち上げて以来、海外から「日本製の葉巻は存在しますか?」という質問を度々受けた。請われてパンドールの現在を調べた結果、随分前から製造が中止されたことにやっと気付く。なにか大切なものを無くした気持ちになった。あちこちのタバコ屋で探し回ったが、見つからず。

公の製造たばこ小売定価表のなかに、パンドールについて興味深いコメントが記載されている「ハバナ葉を主原料とした上級品」。「ハバナ葉」という表現だけでは、ハバナシードから栽培したたばこ葉なのか、又は本当にキューバ産のたばこ葉なのかはわからない。しかし、記憶のなかで美味しい葉巻だったのは間違いない。もう一度吸ってみたい。

Posted: January 25th, 2011   |   Category: Featured