コイーバ・ミニ・シガリロはどうも女性が吸うべき煙草のような気がしてならな い。
そう思ったのはパッケージに描かれているインディアンの絵である。髪をうしろ
で結んだ横顔は私には女性に見えた。ということを誰かに話したら、あごの線を
見なさい、あの太さは男性の顔だ、と言われた。そう見ると確かに太く、さすが
喉仏は描かれてはいないがそれは男性の風貌に見える。インディアンは男性でも
髪は長かったし、後ろでも結んでいたようだ。やはり男性かもしれない。それで
も私は、コイーバ・ミニと女性にこだわりたい。
ロゴデザインはキューバだが、パッケージの印刷や作り、文 字の書体はフランスだろう。だからその美意識もフランス的である。箱の材質、 ラベルの貼り方、中敷のデザイン、間仕切りに書かれたメッセージ、どれを見て もフランスしているのである。ハバナを通してパリが見える。オープン・カフェ の小さなテーブルの上、ガラスの灰皿の横にコイーバ・ミニ・シガリロ。パー ル・レッドのマニキュアをしたパリジェンヌの手がふたをあける。というふう に、クローム・イエローと白と黒にはぜひとも赤の取り合わせが必要だろう。だ から毛むくじゃらな武骨な男の手はこのシガリロには絶対似合わない。
コイーバ・ミニは細い。それに少し短い。両方の切り口も細くなっている。それ に葉の量が少ないのでボディは柔らかい。くわえると吸い口はすぐつぶれ、空気 の通りが悪くなる。細かな葉なので、すぐに口の中に入ってしまう。葉がしっか り詰まってないので火も途中で消え、何度も点けなおさなければならない。と、 良いところはどこにも無いような葉巻製品だが、細さというのは女性の指に合わ せたものであり、吸い口がつぶれるというのも、そんなに大きな口を開けずとも くわえることができ、柔らかさは女性そのもの。葉が口に入ったって、火が途中 で消えたって、その仕種ひとつひとつに艶っぽさを演じることができる。しかし そんな言い訳も無駄になってしまうのが、その香りである。ハバナ、コイーバ、 大地の香り。たとえコイーバ・ミニは小さくとも、エクスタシーを味わうことが できるあのハバナの大地のアロマを確実に秘めているのである。それは充分満足 できるアロマである。プレミアム・シガーに及ぶべくもないのはわかりきってい るが、シガレットの気安さで葉巻の醍醐味というものを味わえるのだから、そう 無下にすることはない。
「オヨ・デ・モンテレイ」のシガリロでも、時折、20本
のうち2本か3本に、腹の底から笑いがこみあげてくるアロマが感じられることが
ある。コイーバ・ミニもしかり。値段のことをことを考えれば、これがたまらな
い魅力なのである。
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